第六館– category –

第六館は、iACITYのどこかに突如として現れる謎の館。その扉の先には、誰もが封じてきた怪異や恐怖が静かに眠っているという。ここを訪れた者の命の保証はない。
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99通目の通知
これは、去年の秋頃に俺が実際に体験した話です。信じるかどうかは任せますが、今でもスマホの通知が増えると不安になります。 俺は都内のIT企業で働いていて、リモートワークが中心。だから日中でもSlack、メール、LINE、ニュースアプリ、何かしらの通知... -
卒業後の海水浴
あの夏、三人で海に行ったんです。高校の頃の友達で、卒業してから初めて集まった日でした。 海水浴なんて何年ぶりか分からないくらいで、みんなはしゃいでました。海の家で焼きそば食べて、スイカ割りして、最後に記念に写真を撮ろうって。ちょうど近くに... -
猿夢
夢を見るとき、僕はよく「あ、これは夢だな」って自覚できる。 昔からそうだった。夢の中でも考えることができるし、怖くなったら自分で目を覚ませることもあった。 だからこの夢も、最初はたいして怖くなかった。 気づいたとき、僕は駅のホームに立ってい... -
人面犬
一人暮らしを始めてから、ゴミ出しはいつも夜にやるクセがついてしまった。 本当は朝に出さなきゃいけないのは分かってるけど、どうしても起きられない。仕事の時間も不規則だし、正直めんどくさい。 その夜も、「とっとと出して寝よう」と思って、ゴミ袋... -
ベッドの下
A子の部屋に泊まるのは初めてだった。 二人で遅くまで話し込んで、気づけば日付も変わっていた。 「そろそろ寝よっか!」 A子の部屋にはベッドが一つだけだったから、私は「床でも全然平気」と言って、布団を借りて横になった。 A子が電気を消そうとリモコ... -
星を見る女性
仕事帰り、たまたま空を見上げた。何の気なしに、ふと顔を上げただけだったけど、その日は星がよく見えた。 「星なんて、いつぶりに見ただろう」 思わず声が出た。心がすっと軽くなる気がした。 それからだった。家に帰っても、ベランダから夜空を眺めるよ... -
赤いクレヨン
新居は、中古とは思えないほど綺麗だった。白い外壁に、南向きの明るいリビング。部屋数も十分で、庭までついていた。 しかも、価格は相場よりもはるかに安い。まるで掘り出し物だった。 引っ越してきたばかりの若い夫婦は、この家をすっかり気に入り、ど... -
コインロッカー
あの頃の私は、どうかしてたんだと思う。若かったし、どうしていいかわからなかった。 妊娠がわかったとき、頭が真っ白になった。誰にも相談できなくて、時間だけが過ぎていった。 産んだあとのことなんて考えられなかった。結婚も、育てることも、何もか... -
メリーさん
引っ越しの日、私は大事にしていた人形をひとつ失くしてしまった。 名前はメリーさん。 白いドレスに巻き毛の、少し古い洋風の人形だった。私が小さい頃からずっと一緒にいた、大切な子。 でも、新しい家への荷物整理の途中で、メリーさんは間違ってゴミに... -
赤い部屋
転勤でこの町に来たのは春先のことだった。 勤め先の紹介で古い木造アパートを借りた。二階建てで四部屋だけのボロアパート。 俺の部屋は二階の一番端。 すぐ隣にも誰か住んでるらしくて、洗濯物が毎日干されてるのを見てた。ワンピースや小さなタオルが多... -
きさらぎ駅
今日はちょっと仕事が長引いて、帰りの電車に乗ったのは22時を過ぎてた。 静岡のローカル線、いつもと同じ路線、同じ時間──のはずだった。 車内には数人、まばらな乗客。座席に腰を下ろして、ぼんやり窓の外を見ていた。 照明の反射で、ガラスに自分の顔が...
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