一人暮らしを始めてから、ゴミ出しはいつも夜にやるクセがついてしまった。
本当は朝に出さなきゃいけないのは分かってるけど、どうしても起きられない。仕事の時間も不規則だし、正直めんどくさい。
その夜も、「とっとと出して寝よう」と思って、ゴミ袋を手に部屋を出た。
アパートの階段を降りて、外へ出る。風が少し冷たくて、袋がガサガサと音を鳴らした。
ゴミ置き場は、敷地の隅のほう。外灯が薄暗く照らしているだけの場所だった。
近づいたとき、ふと何かが動いた。
──犬?
野良犬が、ゴミを漁っている。何か食べ物のを探しているのか。
「シッシッ!」
そう言って追い払おうとした。
犬はゴソゴソと動いていたけれど、こちらに気づいたのか、ゆっくりと振り向いた。
──呼吸が止まった。
犬の顔が、人間の顔だった。
犬の形をした生き物に、まるで誰かの顔が貼りついているみたいだった。
「ほっといてくれ」
そういうと、それは闇に消えていった。
住民の声