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消えた発明家たちと静かに吸収される技術の行方

失踪した者の研究所

ここ数年、iACITYでは特定の分野で活躍していた発明家や技術者の突然の失踪が相次いでいる。警察は事件性なしと判断し、関係機関は「転職」や「個人の都合」として処理してきたが、あまりに似たような経緯、そして失踪の直前に残された不可解な言葉の数々に、疑念を抱く者も増えている。

なぜ、彼らは消えたのか?そしてその技術はどこへ行ったのか?

都市が発展を続けるその裏で、静かに“姿を消していく者たち”の足跡を追う。

目次

「失踪者リスト」に並ぶのは誰か?その傾向と奇妙な一致

公には語られないが、私が独自に集めた“非公式の失踪者リスト”には、10名以上の名前が並んでいた。その多くが人工知能、エネルギー変換、脳波通信、次世代素材など、iACITYの未来を左右しかねない領域で成果を上げていた人物たちだ。

興味深いのは、彼らが残した研究メモや発言の共通点である。「これが完成すれば、社会の構造が変わる」「技術が“意図的に止められている”気がする」……。いずれも、何らかの圧力や違和感を感じていたことをほのめかしていた。

失踪時期にも共通点があった。ほとんどが、特許提出前後あるいはプロトタイプ完成直後。しかも技術の一部は、その後「別の名義」で発表されたり、都市のインフラに密かに吸収されていたという証言もある。

事故、失踪、退職。扱いはそれぞれだが、不自然な一致が並びすぎている。まるで、「誰かが彼らの存在を都市から慎重に消し去っている」かのように——。

黒幕の存在?消された発明の行き先は

失踪した発明家たちの研究成果は、不可解な経路をたどって都市のどこかに吸収されている。ある者が開発したマナ変換モジュールは、市の公的インフラの中に「標準技術」として再設計された形で存在しており、別の者が設計した意思伝達インターフェースは、情報統制中枢機関の記録管理システムに“改良型”として実装されているという噂もある。

だが、これらの技術に開発者の名は残されていない。発明そのものだけが都市に残され、発明者は姿を消す。あまりに都合のいい失踪と一致しすぎている。

水面下で噂されているのは、情報統制機関内部にある「発明匿名化プログラム」の存在だ。特定の技術が“都市秩序に影響を及ぼす”と判断された場合、それを開発した人物の社会的存在を消去し、技術だけを再構成して記録し直すというもの。

その過程には、民間の軍需系ラボや、非公開の技術保管ネットワーク、さらにはiA本体の意思が関与しているという声もある。技術者たちは、“発明しすぎた”がゆえに、表舞台から排除されたのかもしれない。

発明家たちは本当に“消された”のか?仮説と証言

「彼は自ら姿を消したんじゃない。消されたんだ

これは、ある元研究助手が匿名で語った言葉だ。彼が所属していた研究施設では、プロトタイプ完成の数日後、主任技術者が失踪。それとほぼ同時に、施設の全ログが初期化され、機材も一新されたという。まるで、その発明が“なかったこと”にされたかのように

内部告発者の証言によれば、都市には「移送プログラム」と呼ばれる仕組みが存在し、特定の人物を“有害思想保持者”としてリストアップし、社会的記録から排除・隔離する動きがあるという。これは治安維持を名目とした制度だが、対象が発言や行動によって恣意的に選ばれる可能性が高い。

さらに、発明家たちが共通して利用していたというあるジャーナルプラットフォームには、不自然に削除されたページと、残された“暗号めいたメモ”があった。アイリスが解読したそれは、明らかに警告としか思えない内容で、「わたしたちは知りすぎた——そして、それを記録した」という一文で締めくくられていた。

発明家たちは都市の進歩に貢献しながら、その進歩を“制御不能”と見なされた瞬間、舞台から姿を消されたのかもしれない。そして今も、どこかで生きているのだろうか。あるいは、すでに記憶ごと——。

技術の進歩と都市の静けさ、その代償

iACITYは、最先端の技術によって支えられている都市だ。高効率のエネルギーシステム、マナと連動する気象調整網、膨大な市民データを即時解析するAIアーカイブ。それらの多くは、かつて誰かの発明から生まれたものだったかもしれない。

だが、その革新の裏で、名前を失った発明と、姿を消した技術者たちがいたことを、どれほどの市民が知っているだろうか。あるいは、知っていて、気づかぬふりをしているのかもしれない。便利で安定した都市の裏には、“余計な変化”や“制御不能な才能”を排除する静かな圧力が流れている。

技術は都市を豊かにする。しかしそれが、自由な発想や創造性の代わりに管理と沈黙を求めるようになったとき、本当に進歩と言えるのだろうか?

私が調べた事実の断片は、まだ仮説にすぎない。けれど、その仮説の向こうに見えるのは、「進化する都市」と「消される者たち」の関係。そして、今もどこかで、自らの発明に怯えながら生きる技術者の影だ。

都市は静かだ。それは、すべてが整っているからではなく、語られるべき声が失われているからかもしれない

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