水辺や公園で見かけるカモたち。よく見ると、顔を羽の中にうずめて、まるで寒さから逃げるように眠っていることがあります。あの寝姿、ただの癖かと思いきや、実はそこにはちゃんとした理由が隠されているんです。
見た目のかわいさの裏側を、ちょっとだけ覗いてみましょう。
見かけるけどあまり知らない、カモという鳥のこと
公園の池や川辺など、身近な場所でよく見かけるカモ。丸っこい体にくちばし、スイスイ泳ぐ姿は親しみやすく、季節によっては群れでやってくることもあります。
でも、意外とその生態を詳しく知らない人も多いのではないでしょうか?
カモは「渡り鳥」のひとつで、冬の寒い時期になるとシベリアなどの北の国から日本へやってきます。水辺での生活に適応した体を持ち、羽毛は非常に密で水をはじく構造になっているのが特徴。また、尾のあたりには“ 尾脂腺 ”と呼ばれる部分があり、ここから分泌される脂を羽に塗って防水性や保温性を高めています。
私たちが普段ただの水鳥として眺めているカモは、実は自然に適応するために工夫を凝らしたかなりの知恵者なんです。
顔を羽にうずめる理由は?
カモが顔を羽にうずめて眠る姿には、見た目以上にたくさんの意味が込められています。寒さをしのぐため?それとも単なる癖?
実はその仕草には、自然の中で生き抜くための知恵がギュッと詰まっているんです。ここでは、その主な3つの理由を解説していきます。
① 熱を逃がさないための保温行動
水辺で暮らすカモにとって、冷えは大敵。とくに嘴(くちばし)は血流が多く、熱が逃げやすい部位とされています。そのため、寒い時期や風が強いときには、顔を羽の中にしまい込んで自分の体温で暖めるような姿勢をとるのです。
ふわふわの羽毛に包まれた羽の中は、まるで寝袋のような保温空間。これによって、外気に触れる面積を減らし、効率的に体温をキープできるのです。
② 警戒しながら眠る「片脳睡眠」
カモの眠りは、実は“ 全休 ”ではありません。彼らは「片脳睡眠」と呼ばれる特殊な睡眠スタイルをとることができます。これは脳の片側だけを休ませて、もう一方は覚醒させたままにするというもの。
これにより、外敵の接近を察知しながらも休息をとることができるのです。顔をうずめていても、片目を薄く開けたままにしていたり、完全に無防備になることはありません。自然界で生き残るための、本能的なサバイバル術ですね。
③ 羽繕いの延長でそのままおやすみ
カモたちは日常的に「羽繕い」をしています。これはお尻のあたりにある尾脂腺という部分から脂をとり、嘴を使って羽に塗り込む行動。これによって羽毛の防水性が保たれ、外敵や水の冷たさから体を守ることができます。
羽繕いはリラックスしたときに行うことが多く、そのまま顔を羽の中に入れたままウトウトする姿もよく見られます。羽の中は安全で心地よく、まさに“ おやすみポジション ”なんですね。
その寝姿、他の鳥もやってる?
カモが顔を羽にうずめて眠る姿はとても特徴的ですが、実はこの行動、カモに限ったものではありません。ハクチョウやアヒル、カモメなど、水鳥を中心とした多くの鳥たちが、同じように顔を羽にしまい込んで休む姿を見せます。
羽毛による保温効果や片脳睡眠といった特徴は、鳥類に広く共通しているためです。とくに嘴や足先など、熱が逃げやすい部位を羽で覆って寒さから守るのは、野生で暮らす鳥たちにとってはごく自然な習慣。
冬の公園や湖などで、まんまるくなってじっとしている鳥たちを見かけたら、それはきっと“ 安心ポジション ”で休んでいるところ。カモだけでなく、他の鳥たちの寝姿にもぜひ注目してみてください。
まとめ
鴨が顔を羽にうずめて眠る姿には、保温、警戒、羽繕いという3つの理由がありました。ただのかわいいしぐさに見えて、実は自然の中で生きるための知恵と工夫が詰まっているんですね。
くちばしを羽で覆うことで冷えを防ぎ、片脳睡眠で周囲に注意を払いながら休み、羽のお手入れの流れでそのまま眠る。すべての動作に無駄がなく、自然と共に生きてきた鳥ならではの合理性を感じます。
そしてこの寝方は鴨だけでなく、他の水鳥にも共通する行動。冬の公園でまるくなって休む鳥たちの姿にも、きっと同じ理由があるはずです。
次に水辺で鴨を見かけたとき、ちょっと立ち止まって、そのふわふわの中にある自然のロジックを想像してみてください。
住民の声